・・・・・・・・・・・ 前置き ・・・・・・・・・・・

 私が、シガーについての鑑定士を探していたときに、ある一人の偉大なマスターに出会ったのは偶然ではなかった。Gilbert Belaubre (ジルベール・ベローブル)は、彼の人生と情熱を、シガーに対しての知識、創造、テイスティングに全て費やしている。彼もまた、シガーの香りを聞き、認識することを追及していた。
 彼は、テイスティングの最中にも、偉大なシガーの核心を作るのはなんだろうか?という根源的な問いかけを自身で行っていた。
 Yves Belaubre (イブ・ベローブル)は、彼の父のように、また素晴らしい鑑定士だ。我々三人は、シガーに現れる植物や動物の香りを追い、また同様にこの大きなそして神秘的な葉を生み出す土地の香りを追った。我々の協働作業、Le Nez du Cigar(シガーの香り)により、シガーのテイスティングの神秘は解き明かされる。

                                  Jean Lenoir(ジャン・ルノワール)

 

 

・・・・・・・・・・・ 序文 ・・・・・・・・・・

 ジャン・ルノワールの考えはいたって単純で、そのために天才性が潜んでいる。ワインに香りがあるようにシガーにも香りがある。この香りを聞き分けることができれば、我々はシガーを理解することができる。シガーを学ぶ上で、香りは我々を案内してくれるであろう。それはワインを学ぶときと同じように。今日、多くの愛好家がテイスティングの楽しさを理解しマスターしたいと考えている。愛好家達はテイスティングの技術を向上させたいのだ。何年もかけて、私はシガーの分析をするとともに、テイスティング方法を確立してきた。これらの努力の第一の革新的成果は、アロマのコレクションである。
 さぁ、香りの小瓶をあけようではないか。そして、その香りをわれわれの記憶に定着させよう。我々がすでにそれらの香りを知っていることが明らかになる。細心の注意を払って選ばれたこれらの香りは、偉大なるたばこの葉の煙のなかに見出すことができ、このことにより、我々はシガー王国のなかを自信を持ってさまようことができる。我々は、とても個人的な楽しみを表現するための言葉を学ぶであろう。そしてそれらの言葉は、シガーについて話をする二人の愛好家によって分かち合われた楽園の小さなかけらなのだ。
 この偉大なる洗練されたもの、すなわちシガーの香りのスペシャリストである、我が息子イブ・ベローブルとこの作品を創り出すことを勧めてくれたジャン・ルノワールに感謝。

                                       ジルベール・ベローブル

 

 

 

    

・・・・・・・・・・種からラッパーへ

偉大なるシガーの偉大なるたばこの葉
 アメリカにおいて、初めて西欧人がたばこを知ってから2世紀を待たずに、世界中で栽培されるようになった。種子、土壌、気候、栽培方法の違いによって、収穫物は非常に多様になっている。しかし、ある理想的な熱帯地域からの茶色いたばこの葉(戸外で乾燥され発酵させられた)だけが、シガーづくりに適当である。

非常に有名な地域
キューバ
島の西側にある、ブエルタ・アバホとパルティード地域。たばこの葉は強く、複雑。

ドミニカ
この国の中心部にある、シバオ地域とラ・ベガ地域。2種類のたばこの葉がある。1つは、オロール・ドミニカーノ、もう1つはピロト・クバーノ。リッチな香りとがっしりしたボディ。しかしとても強くなる訳ではない。

ホンデュラス
北西に向かってサンタ・ロサ地域と南に向かってダンリー(ジャマストラン・バレー)地域。スムーズできれいな香りのたばこの葉。

ニカラグア
ホンデュラスのたばこの葉よりも強い。

メキシコ
軽く、どちらかと言えばアロマティックなたばこ

ブラジル
マタ・フィーナ地域の痩せた砂利質の土壌が、偉大なるアロマの豊かなたばこの葉を産む。

インドネシア
ジャワ島のベソエキとフォアシュテンランデンの土壌が、軽く、やや苦味のあるたばこの葉を産む。

フィリピンエクアドルやそのほかの中米の国々のある地域のたばこの葉は、ブレンドされた場合には興味深いものになる。

このほかの地域ではラッパーで有名だ。スマトラ(メダン地域)、カメルーンネチカット遮光栽培のたばこの葉)の最高級品。しかし、これらの葉が、「偉大なるヴィンテージ」になるには、細心の収穫と乾燥と発酵の正しい手順が必要になる。

 

栽培と加工
 まず、注意深く種子を選定することから始まる。それから種まきに最適な時季を選ぶこと、そして、最後に害虫や病気との闘いある。3ヶ月の間に、顕微鏡でみなければならない程の種は、1.8メートルほどになり、2ダースの大きな葉をつける。葉に影響がいくように、花は摘まれることが多い。
 収穫は、いくつかのステップで行われ、下の葉から始められる。次のように呼ばれるステップである。

 −リブレ・デ・ピエ(土台部分での自由)
              土によってダメージを受けていない最も低い葉を摘む。
 −ウノ・イ・メディオ(1と1/2)−すぐ上の葉を摘む。
 −セントロ その株の中間部分の葉を摘む
 −コロナ その株の上のほうの小さな葉を摘む。

 そして葉は、乾燥棚で陰干しされる。6〜8週間ののちに、葉は茶色く、もろく、燃やされると刺激的な煙を出すようになる。

 人間の介入がより劇的な変化をもたらす。発酵である。葉は集められ、積み重ねられる。この過程を経て、葉は壊れやすくなくなり、より柔軟になり安定するようになる。これで、この葉はシガーづくりの準備ができたことになる。

 葉は、「フォルダレサ(外観と感触から判断されたたばこの葉としての強さ)」に従い、通常3つの主な等級に分けられる。

 −ヴォラード
 主に下の葉から作られる。
 −セコ よりボディがある。主に中ぐらいの高さにある葉から作られる。
 −リヘロ 株の3分の2よりも上のほうの肉付きのいい葉。

トルセドールの匠
 シガーは、たばこの葉(ロング・フィラー)を、より厚みのあるより完全な形の葉(バインダー)で巻いて作られ、シガーの形になるのである。そして、最終的な形を決める押し型のなかに数時間置かれる。最後の作業は、外巻きをすることである。きれいな、そして非常に柔軟な葉を長い長方形に切り、斜めに足の方から頭の方(煙を吸う方の端)へと巻いていく。そして、頭のところは、最後にはキャップをされ、糊でとめられる。シガーの仕上げである。
 

 

   

・・・・・・・・・・スモーク(煙)

シガーの燃焼の物理学
 シガーに火をつけると、中心部の温度がより早く上昇する。仮に、シガーの葉の燃焼性が全て均一ならば、中心部が早く燃え中空になってしまい、中心部の燃焼部分が落ちることとなる。この深刻な問題を避けるために、バインダーは、フィラーよりも燃焼性の高いものを選び、ラッパーはバインダーよりもさらに燃焼性が高いものが選ばれる。燃焼性のバランスが取られていれば、シガーは均等に燃えることとなる。
シガーの燃焼の化学
シガーの煙は、一種の煙霧物質で、燃焼による残留物質を含んでいる。すなわち、蒸気、二酸化炭素、そのほかの程度の違いはあるが熱分解された物質などである。熱分解された物質は、様々なガス(刺激的な場合が多い)や香りの分子やニコチンを含んだ粒子などである。
温度の影響
シガーが冷たいときには、煙は濃縮されてガスはシャープで刺激的なまま口に到達する。このような現象は、シガーの温度が上がるにつれて解消され、濃縮度も低下する。シガーが理想的な温度に達したときには、煙は豊かで満足のいくものとなる。
シガーの太さの影響
シガーが太ければ、吸い込みがゆっくりとなり、煙の温度が低くなる。太いシガーでは、香りの分子が燃え尽きないために、シガーの太さはたばこの葉の香りに有利にはたらく。
長さの影響
長いシガーは、より大きなフィルター効果が得られる。また、長いシガーは、適当な燃焼効率に達するのに時間がかかり、その煙はフル・ボディさが少なくなる。
湿度の影響
燃焼中の水分の蒸発は、大量の熱を奪っていく。このため、シガーに湿度があればあるほど、燃焼温度は低くなる。水分は、蒸気となり、刺激を少なくさせ、香りに対する感覚を増すことになる。このためシガーの適切な水分は欠かせないものとなる。適切なシガーの湿度はおよそ13%である。この湿度は、湿度70〜75%に管理された環境にシガーがおかれることで得られる。この湿度におかれる限り、温度については目だった影響を及ぼさない。しかしながら、加湿器はそれほど信頼できない。タバコ・ショップとしては、加湿器としてベストなのは、湿度調節ができるエアコンである。家庭用ヒュミドールについては、自動調節型のクレド社のものだけが効果的である。

 

 

 


   

・・・・・・・・・・シガーの味わい

 表現し得ない感覚というものは、忘れ去られる運命にある。言葉をしゃべることでその感覚したものを掴むことができ、言葉を書くことで、その感覚したものを保存することができる。言葉は、だから欠くべからざる道具である。
様々なものが混じった煙のなかには、香りの要素が常にニコチンと一緒にあり、香りの要素の強さが煙の厚みと濃さを形成している。「ボディ」とは、こういった煙の濃密さの出来を表す言葉である。
非常に強い煙は、ある一種類のどちらかと言えば単調な香りを持つ場合もあるし、その反対に複雑な場合もある。「香りの豊かさ」とは、この香りを嗅いだときの複雑性と広がりのことを表現するための言葉である。
鼻を鍛えることで、煙のなかの香りの傾向を見分けることができ、自然界に存在する香りを見つけることができる。このような経過から、私たちはこの香りのキットを構成した。このキットでは、私たちの選択は、明らかに少ないと思われる。しかし、シガーのなかに見出される主な香りの組み合わせを読み解くための基礎は確かに満たしていると思われる。


テイスティングの技術
シガー愛好家が一本のシガーを吸おうというとき、いつも同じ手順を踏む。彼は香りを楽しみながら、彼のシガー・コレクションをチェックする。彼は一本を選び、観察し、触り、香りを嗅ぎ、そして吸い口を切り、口にくわえる。火をつける前に、彼はたばこの葉の香りの第一段階を経験することになる。この段階で、すでにシガーの分析を行える。すなわち、シガーのつくり、ラッパーの品質と色、きめ、光沢があるかないか、巻きが固いかどうか、火をつけた際にどれくらいの吸い込みやすさか。
ラッパーの色:(薄い黄色から黒へ)クラーロ・クラーロ、クラーロ(薄い金色)、
          コロラド・クラーロ、コロラド(青銅食)、コロラド・マドゥーロ、マドゥーロ、
          オスクロ
巻きの固さ:固い、しっかりとした、やわい

シガーは火をつけられた
 分析の瞬間である。

 −吹かしやすさ;吹かしにくい、吹かし易い、吹かし易すぎる
 −燃焼スピード;シガーの燃えている部分がどうなっているか。
            先端が平らになっているか、それとも真ん中がくぼんでいないか。
 −刺激要素;ピリッとする(舌の先端)、きめが粗い・雑味(舌)、ひりつき(頬の内側)、
         いがいがする(喉)
 −最初の味わい;煙のなかには次の味が見出される。苦味、甘み、ときとして酸味。
             そしてまれに塩み(唇)
シガーの香りを作る(シガーの香りを理解する)

 燃焼を一定化させることで、我々は、ボディ、香りの豊かさ、そして香りを分析することができる。シガーのテイスティングでは、「ボディ」と「豊かさ」という概念によって、様々なシガーのタイプを確立することでき、それはとりもなおさずシガーを高い安いといったことからだけ判断するという罠から逃れるということである。つまり、愛好家にはそれぞれ自分の好みがあるということだ。
 煙のなかに違った香りを見出すという作業すなわち香りの分析はシガーへの我々の関り方をより洗練されたものにする。
巻末のテイスティング・カードに、「ボディ」「豊かさ」「味」「香」を表現する語彙を掲げた。
以下のリストは、シガーに見出される主な香である。そのうち最も重要なものには下線を施し、この香のセットに採用した。

香のおもな分類

植物:
干草、乾いた草、麦わら、ライ麦、ユーカリ、樟脳(ナフタリン)

木、芳香系の香り:
杉、樫、樫の木の苔、甘草、松ヤニ、お香

スパイス:
胡椒、ピーマン、唐辛子、ネズの実、ヴァニラ、ナツメグ、ジンジャーブレッド

果物、エキゾチック:
ライチ、ココナッツ

動物:
ビーバー、じゃこう(じゃこう猫)、ムスク(じゃこう鹿)、馬屋の匂い、羊、、蜂蜜、アンモニア、ヨウ素

ロースト香:
チコリの根(ローストしてコーヒーに加える)、コーヒー、ココア、モカ、キャラメル、トースト、タール

有機物:
きのこ、腐植土、湿った土、トリュフ

悪いシガーの香:
ほこり、燃えた紙、腐敗臭、燃えた角(つの)、薬品臭

 

 

 

 

     

・・・・・・・・・・カラメル

 色と香の両方の意味において、カラメルという言葉は、スペイン語のカラメロから来ており、中世ラテン語のカンナメラ、サトウキビから来ている。砂糖はいったん溶けるといくつかの強い香の要素を生み出す。例えば、ファルネゾール(新鮮なグリーン香気)、マルトール(甘いカラメルの香)、フルフラール(甘い香)など。
テイスティング・ノート
 葉巻の燃焼にともない、必ずカラメルの香が現れる。これは、植物の中の等分が燃えることによる。これらの香は、二つの大きな系統に属する。

−焦げた香(トースト、ジンジャー・ブレッド) ドミニカ、ホンデュラスのシガーによく現れる

−ロースト香(炒ったナッツ、ココア、コーヒー、モカ、チコリ) 粗っぽいハバナ・シガーは、トースト香とチコリの香が強い。柔らかいハバナ・シガーが、ミルクとともにカラメル香がしたり、モカ、ヘーゼルナッツや蜂蜜の香がしたりする。ドミニカのシガーには、ジンジャーブレッドの香からリコリス(甘草)の香までの幅の香がする。また、ときにはヴァニラ香までの幅になる。そのヴァニラ香はミルクのかすかな香を伴うが、この香はジャマイカのシガーでもする香である。ホンデュラスのシガーでは強いリコリスの要素が感じられ、時にはそれは焦げた砂糖の香と混ざっているときがある。

ジャワのシガーの苦味は、苦いチコリを想起させる。ブラジルのシガーのスムーズさはミルクとココアとともにカラメルの香を連想させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

    

・・・・・・・・・・革

 革という単語は、なめした牛の皮とその匂いを指す。この香は、靴や革で覆われた家具でよく嗅ぐことができる。この香は、「ドライ」な香だが、時としてとてもドライで、温かみ、エレガンス、独特さ、そして男っぽさを想起させる。
革の匂いは、常に他の強い香を伴う。ムスクの匂いや強いカラメルの香である。これらの香はまた他の香を伴うものであるが、革の香はやはり独特の香で、判別できる香である。
テイスティング・ノート
 この香には、濃い、フルボディの煙のなかで出会うことができる。粗っぽいキューバ・シガーにはそれほど上質ではない革のニュアンスがあり、上質のハバナ・シガーには、デリケートな革の感じがする。ホンデュラスのシガーはリッチさという点ではやや劣るが、それでもドライな革の香がある。ドミニカのシガーには革の香はしないが、ドミニカの優れたシガー生産者は、この香を表現するためにブレンドを工夫している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      

・・・・・・・・・オーク・モス(樫の木の苔)

 木のコケ類のなかでは、オークのものが最もよく知られている。冬と初春に温暖な地域(旧ユーゴスラビア、オーベルニュ地方、アトラス山脈)で採られる。
オーク・モスは濃縮されると、イチジクのドライなニュアンスを想起させる。香水関係者に言わせれば、オーク・モスの香は、大きな分子で、拡散しにくく、ゆっくりとした揮発である。例えばコケのような、植物の匂いは全てのシガーの煙にふくまれており、幅の広い香の種類がある。
テイスティング・ノート
 ジャマイカとドミニカのシガーには、時々青臭さや熟成していない感じがすることがある。干草のにおいはドミニカのシガーに顕著である。また、ハバナの軽いシガーにも同様の香がするが、フローラル系の香と交じり合っている。そしてこの香はしばしばミルクかクリームの香といい具合に混じっていることがある。インドネシアとフィリピン、そして中国のシガーはしばしば甘すぎて、なおかつ非常に広い範囲の植物の香をふくんでいる。ネズの実香りを想起させたり、花、果物、エキゾチックなスパイス(ライチ、ココナッツ、シナモン、カレー、ピーマン)の香がするようになったりなり、時には、ユーカリや焦げた草の香に変化することがある。
 甘いシガーでは、干草や藁の強烈さが植物のブケを隠す場合がある。
 しかし、全ての湿度不足のシガーは、草っぽい匂いが、藁の香や紙の焦げた不快な香に変化する傾向がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              

・・・・・・・・・ムスク

 小さな鹿の一種である、ジャコウジカはチベットの高地に生息している。ムスクと呼ばれるものは、オスの性腺から生み出されるものである。ムスクの有名な匂いのもとは、ムスコン、環状ケトンという化学物質で、嗅覚を刺激するので知られている。
テイスティング・ノート
 ムスクの香やそのほかの動物香は、発酵の過程で生み出されたアンモニア由来のものがタバコの葉にあることを示している。このため、シガーの煙の中には、必ずこれらのアンモニアの匂いや納屋や厩の特徴があることになる。
 これらの動物臭は、粗いキューバのシガーやある種のニカラグアのシガーに、樟脳やヨウ素の香とともに、強く現れる。
 ドミニカや軽いキューバのシガーには、そういった香は弱くではあるが多用な形で、杜松の実のエッセンスの香や羊の匂いとともに現れる。
 生のホンデュラスのタバコの葉には、好ましい幅の動物臭がするが、シガーの煙に動物臭を発見するのは難しい。ムスクの香や厩の香は、典型的なブラジル、マニラ、ジャワのシガーには見つけることは難しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             

・・・・・・・・・胡椒

 インド原産。熱帯のつた植物の果実で、花から果実の房が生まれる。完熟した果実を蒸留して男性用コロンに使われる胡椒のエッセンスが作られる。このエッセンスは、含有されるフェランドレンやディペンテンから、暖かいほとんど動物の香や深い草っぽい香を出す。
テイスティング・ノート
 火のついていないシガーを吸った際には、胡椒やその他のスパイスの香がほとんど必ずするものである。キューバのシガーの煙には、この胡椒の味わいがしばしば強く現れる。特にいいキューバ・シガーの場合ピーマンやナツメグの香とともに現れる。ブラジルのシガーについても、ナツメグと軽い胡椒の香のブレンドが感じられる。
 ドミニカのシガーが胡椒の香がする場合には、シガーは甘く味付けされ口当たりがいい。ホンデュラスのシガーの場合、胡椒の香は、もっと素朴な風味と一緒に現れる。
 メキシコ、ジャワ、フィリピンのシガーには、胡椒の香はあまり現れない。胡椒の香が現れた場合には、非常にドライで、耐え難い金属的な印象を与える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


             

・・・・・・・・・湿った土

 小さな流れの速い小川の土手で見られる新鮮な感じは、ゲオスミンのそれと似ている。ゲオスミンはギリシャ語のゲオデス(土っぽい)から来ているが、バクテリア、カビ又は藻からなる化学化合物である。
 土に接するものは、乾燥していても湿っていても、粘土やコケの匂いを持っており、腐敗や分解は、養分の豊かな腐植土のなかの新しい生命をもたらす。
テイスティング・ノート
 タバコの葉が成長するにつれて、土の匂いが葉に昇っていく。これが、ハバナのシガーやドミニカの特定のシガーに現れる、土っぽさの理由である。ドミニカの土は、干草の植物的な香によって土の香を現している。これは特に、オロール・ドミニカノ種のタバコの葉に特有のものだ。キューバのシガーでは、粗野な製品の煙には土の匂いはよりヘビーで、粗っぽい感じがする。上質の葉のブレンドの場合には、幾分かフローラルのような香がするが。
 ホンデュラスのシガーの場合は、しばしば粗っぽいために、土っぽい場合がある。ニカラグアのシガーの場合も土っぽさを持つが、木のタッチもある。この木のタッチは、特定のドミニカのミディアムサイズのゲージのシガーでもする。(香のミックスにおいて、ゲージが及ぼす影響は、興味深いバリエーションを産む。)
 全てのシガーにおいて、土の香の強さと品質は、シガーの湿度に強く影響される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


        

 

 

・・・・・・・・・・・・ エピローグ ・・・・・・・・・・・・

 シガー愛好家は、シガーの煙のなかに、自己中心的ではない満足感を見出す。他方では、彼は社会的な存在であるが、しかし、一本のシガーは、ゆっくりとした、注意深い、そしてなお身長なリズムを求める。この満足の極みを味わうためには、彼は、修行の道を歩まなければならない。
 初心者は熱心であることが多いが、混乱しやすい。彼は、学ぶことに急であるが、修行の途上での困難が彼の情熱をくじくことがあるだろう。一歩一歩が、頂上へと導く新しい一歩であるということを理解することができるような指導が必要である。全ての一歩が、新たな発見を導き、旅は彼を魅了する。しかし、彼が進歩すればするほど、さらに遠くに頂が見えてくる。最初は近くに、そして遠くに現れ、届きがたく見える。
 これは、謙虚さが試されているのである。忍耐とともに進歩した、口数の少ない、簡素な言葉をもって言い表すあの人々の箴言である。